コロナウィルスの感染対策を講じながら暮らしていくこれからの生活をウィズ・コロナと言ったり、コロナ禍を境に以前とガラリと変わった生活スタイルのことをアフターコロナと言ったり、色々な言葉が使われ始めました。時代が変わる瞬間にいるんだな、とひしひしと感じます。
20世紀初頭に広がった”モダニズム建築”というスタイルは世界的な結核やペスト、スペイン風邪など疫病の大流行の後に発展していきました。患者の療養施設が多く建設される中で、他の建築物もそれらと同様に清潔さや機能性を重視されるようになっていきました。一連の作品群が世界遺産となっているル・コルビュジェという建築家のもっとも有名な住宅作品であるサヴォワ邸には玄関ホールに手洗器があり、なんだかコロナ禍の現代にも通じるような、しつらえです。
これから家づくりをする人々は少なからずコロナの影響を受けることになります。まずは感染防止策で家に着いたらすぐに手を洗ったり着替えたりするスペースをどうするか。在宅勤務が増える方であればワークスペースをどう確保するか悩んだり、ネット会議に映り込むインテリアを気にしたり、などよく耳にします。
これまで設計してきた事例の中から、今回は玄関やリビングに設けた手洗い器で参考にしていただけそうなものをいくつか選んでみました。
まずは玄関に入ってすぐのところに手洗い器がある事例を2つご紹介します。
これは”交差点”という住宅の玄関です。
玄関の正面に収納扉があり、左側がリビングにつながっているのですが、左側の壁から少しだけ飛び出して見えているのが手洗い器です。
リビングダイニングに行く前にまずは手を洗いましょう、という意図でここに手洗い器を設置しました。右側の壁面収納の一部がトイレになっているので、トイレの手洗い器も兼ねています。
(上記2点、撮影:平井広行)
次は新潟の住宅メーカーのために設計したコンセプトハウスです。共働き世帯の多い地域性を考慮して家事動線、時短動線を追求した事例でした。こちらも玄関ドアを開けてすぐのところに収納と手洗い器を備えました。
下が全体のプランです。玄関を入って左右に動線が分かれています。左に行くと手洗器があってその先のお風呂やキッチンへ直行できる配置です。
この住宅は1年ほどモデルハウスとして公開された後、現在はそのまま購入された方がお住まいです。回遊できる家事動線が子育て世代に好評をいただきました。
次はリビングに設けた手洗い器の事例を2つご紹介します。
”所沢の住宅”のリビングです。
2階にあるリビングの壁面全面に収納とベンチを兼ねたカウンターを設け、その隅っこに手洗い器を置きました。2階に水廻りがないプランだったので、ちょっとした水栓と手洗い器があると重宝します。
リビングに突然現れる水廻りなので違和感のないように、カウンターの上にちょこんと器が置かれているような雰囲気がでるように工夫しました。
最後は”将監の住宅”のリビングです。
この写真の右奥が玄関になっているのでベンチの背面にある白い箱は下足入を兼ねた収納カウンターになっています。その上にシンプルな形の手洗い器を置きました。洗面所やお風呂が少し離れている場合には、こんな風に玄関やリビングに手洗い器があると便利です。
いかがでしたでしょうか。
ワークスペースの事例についても別の機会に取り上げてみたいと思います。
佐藤千恵/後藤武建築設計事務所