今は仕事場も住まいも横浜ですが、独立したばかりの頃は渋谷に事務所を構えていました。桜丘町という渋谷の中でも落ち着いた雰囲気の界隈で、お気に入りのカフェや飲食店もたくさんある大好きな街です。
その当時、少しの期間でしたが、設計の仕事とは別に「渋谷さくら育樹の会」という地域のNPO団体に加入して、桜丘にある桜の保護や地域活性のための花育活動などに参加していました。

丁度私が加入した頃、桜並木に沿った歩道の拡幅工事を行うため渋谷区と住民の意見交換会が定期的に開催されていて、私もさくら育樹の会として何度か参加していました。さくら育樹の会からは、新設される無機質なガードレールが目立たないよう低木の植栽を提案したところ、行政の土木課が道路脇に植える植物は大抵がサツキ・ツツジと決まっているとの回答。公園緑地課と違い、土木課は植栽のメンテナンスに人員を避けないというのが理由なのですが、桜並木の下では木陰になって手間がかからず丈夫なはずのサツキ・ツツジでも花や葉をつけられないかもしれません。

そこで、日陰に強く丈夫に育つ、かつ桜のように街の特徴になるような花木はないかを探して、個人的に好きだったこともあり、羽衣ジャスミンを提案しそれが受け入れられ、歩道の完成後植栽されました。2010年晩秋のことです。
ジャスミンはツル性なので最初はヒョロヒョロと数本伸びているだけで、提案はしてみたものの本当に皆んなの期待通り育って咲いてくれるのか心配でたまらなかったのですが、育つ姿を1年も見ずに横浜へ移転してしまいました。

2010年当時の歩道拡幅工事の様子。道路側の支柱にガードレールが付く直前です。

2010年当時の歩道拡幅工事の様子。道路側の支柱にガードレールが付く直前です。

あれから7年過ぎ、先日偶然見かけた「さくら育樹の会」のfacebookページ(当時はありませんでしたよね)にそのジャスミンが立派に育った姿が報告されていて、感激しました。離れて暮らす子どもが無地に成長していたような嬉しさです(笑)
※下の写真は↑のfacebookページからお借りしました。

ツル性のジャスミンはどんどん伸びてガードレールをすっぽり覆ってしまいました。

ツル性のジャスミンはどんどん伸びてガードレールをすっぽり覆ってしまいました。


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植栽の計画はイメージ通りに育つまで数年かかる点で建物の設計と違いがあって難しいものの、思い描いた通りに景観が出来上がった時の感激はまた格別です。

ジャスミンの香り、今の季節あちらこちらから漂ってきますね。

佐藤千恵/後藤武建築設計事務所