愛知県常滑市の古い街をあるいて来ました。
常滑(とこなめ)は、床(とこ)つまりは地盤が滑らかであることを意味していると言われ古くから陶芸に使われる粘土の産地であった事から、煉瓦や土管などの陶業の一大産地となりました。現在の株式会社LIXIL、INAXの前身である伊奈製陶の創業の地でもあります。

美しい瓦の大屋根が残る街並み

美しい瓦の大屋根が残る街並み

街の一部の坂道だらけの土地は近代の開発から逃れ(漏れ?)多くの建物や煙突が当時のままの姿で残っていて、今はそこが趣のある散策ルートになっています。美味しいしょうゆ団子をかじりながら、タイムスリップしたようなお散歩になりました。

街に残る煙突は皆使われていません。朽ちているものや木が生えている姿はシュールな光景でした。

街に残る煙突は皆使われていません。朽ちているものや木が生えている姿はシュールな光景でした。

木の外壁は皆、黒く塗られているようなのですが、これは煙突から出た煙のすすで真っ黒になったのでしょう。陶業が真っ盛りだったころ、常滑のスズメは真っ黒で、隣街に出かけた子供が黒くない柄のあるスズメを見て驚いたそうです。

登り釜の頂部に向かって高さが変化する煙突

登り釜の頂部に向かって高さが変化する煙突

商品にならなかった土管や坪が土留めや基礎に使われていてビックリ。

商品にならなかった土管や坪が土留めや基礎に使われていてビックリ。

陶芸の地から陶業の街となり栄え、産業の近代化により一旦は静かになった街がまた観光地として人が集まるようになった100年以上の時の流れを凝縮して眺めるような一日でした。
途中で、古い街の ”色味” に合わせて外壁を黒くしている新しい住宅をいくつか見かけました。
古い街の景観を、住んでいる人々自ら守ろうとしている気持ちが伝わって来て、素敵なことだなと思う一方で…
やはり時間をかけてつくりあげられた ”味” にはかなわないものだな…とまた古いものに魅せられて帰路につきました。

佐藤千恵/後藤武建築設計事務所